白熊日記

7歳と5歳を育てる母親が、日々考えたことを書いています。

生きていたい

仲のいい同級生のお母さんが亡くなった。急性の白血病で、診断されてからひと月だったらしい。子育て世代の親なので高齢者ではあるものの、亡くなるには早すぎる年齢だった。

子どもが生まれる前、私は欲にまみれていた。親しみやすい人でありつつも、一目置かれる存在でありたい、センスがいい人だと思われたい、そしてあわよくば、不特定多数の人に名前を知られるような何かを達成したいとも思っていた。今考えると滑稽なほど壮大で平和な野望である。

子どもが生まれると、不特定多数の人に名前を知られるような何かを、というジャンルの欲はなくなった。いや、なくなったのではなく、その欲を満たすために使える時間が減ったことによって欲自体をあきらめることができたのだと思う。

代わって強烈に生じたのが「死にたくない」という欲だった。正直、子どもを産むまで私は「死にたくない」と強く思ったことはなかった。「死にたい」と思うことがないのと同等に。その頃の私にとって、今現在生きていること、そしてこの先も生き続けることは、疑う余地すらない当たり前の前提だったのだ。

この子たちが幼いうちは絶対に死にたくない。できれば中年になるぐらいまでは元気でいたい。もっと言えば彼らが還暦になる頃まで生きていたい。高齢出産だったこともあり、その気持ちは日に日に強くなっている。

友人のお母さんも、子どもを産んで以降何十年もこんな気持ちを持っていたのではないかと思うと、親を亡くした友人に対して同じ子どもとして心を寄せると同時に、まだ比較的若い子どもたちを残して旅立ったお母さんもどんなに無念だったかと胸が痛む。必死で産んで大事に育てた子どもたちの未来を、もっともっと、彼らが年老いるまでずっと見ていたかったと思う。

ご冥福をお祈りします。