白熊日記

7歳と5歳を育てる母親が、日々考えたことを書いています。

今日いちばん楽しかったことは?

長男は寝るのが下手だ。新生児の頃から寝つきが悪く、2歳になる頃ようやく朝まで通して眠れるようになったが、それまでは長男を抱っこ紐に入れて上半身を起こしたまま寝たことも、夜中に起きて泣く長男とおさるのジョージを観て眠くなるのを待ったことも、数えきれないほどあった。初めての子どもだったので、こんなもんかとあまり苦にせずにいられたが、2年後に次男が生まれた時はそのあまりの寝つきのよさに驚いた。そして、そこでようやく長男のことを「ああ、この子は寝るのが苦手だったんだ」と理解することができた。

子どもたちと私で川の字になって寝ている今も、次男がスースー寝息をたて始める隣で「ねむれない」「どうしてねむれないんだろう、弟はいいなあすぐねむれて」とつぶやきながら、最低でも40分ぐらいは起きている。目をつぶって深呼吸したら?とか、楽しいこと考えたらいいかもよとか、いろんな提案はするものの、私自身も寝つきはいいタイプなので実際的な効果のある対策は提供できない。

でも、次男が眠ってから長男が眠るまでのその40分は、長男とふたりだけで話ができる貴重な時間でもある。学校であったちょっと嫌なことや、ゲームの攻略法の話、どうして戦争は起こるのかという疑問、今度の休みに白玉団子を作ってみたいという話、次のクリスマスに何を頼もうかという話。家族4人、あるいは次男と3人でいる時には出てこないような話題も出てくるので、寝つけない本人の辛さや睡眠不足になる心配はありつつも、それはそれでいい時間である。

そんな毎日の眠気待ちタイムに登場する話題として最も多いのは、長男からの「お母さん、今日は何がいちばん楽しかった?」という質問である。初めて聞かれた時は「ええー?」と聞き返してしまった。確か長男が3歳の頃だったと思う。いちばん楽しかったこと?そんなの考えたこともなかったからだ。

当時は3歳と1歳をほとんどワンオペで見ていて時間の余裕もなかったし、日に日にできることが増えていく幼児たち相手では常に危機回避が最優先で、楽しい瞬間なんて本当になかった。でも、何も楽しくなかったのかと言われると、そういうわけでもない。というか、自分の身に起こったできごとを解像度高く見つめる暇もないわけで、楽しいとか楽しくないとかは置いておいて、今日自分がやったことイコール子どもたちと一緒にいたこと、という大雑把な振り返りしかできない時期だったのだ。

そんなわけで、当初の私の回答は毎日「今日も長男くんと次男くんが元気で怪我しなかったこと」だったのだが、最初こそ「ふーん」とスルーしていた長男も、徐々に「お母さん、それは当たり前のことでしょ。楽しかったことは何だったの?」と的確なツッコミをするようになる。そこでようやく私は、毎晩のその質問に備えて、その日楽しかったことを寝る前までに考えるようになった。

おやつのヤングドーナツがおいしかったこと、長男くんと折り紙やったこと、長男くんと作ったドミノがめっちゃ上手に倒れたこと。そうやって楽しかったことを伝え合ううちに、子どもに対する愛情も、口に出さないと伝わらないのかもしれないなと思うようになった。折り紙もドミノも、私はたぶん笑いながらやっていたはずなのに、布団で改めてそれが今日の楽しかったことだと伝えると、長男はとてもうれしそうな顔をするのだ。

そんな長男が昨日、寝つけない理由を分析してくれた。曰く、シーンと静まり返っている状態が怖くて、目をつぶっていられなくなるらしい。へえー、じゃあYouTubeで静かな音楽でもかけてみる?と言って、ジブリの曲をピアノで演奏するプレイリストみたいなのを適当にかけると、「いいねえー、きれいだねえ」「これトトロの歌?」とか言いながら、なんと3分ぐらいで眠ってしまった。

ジブリすごい。ピアノすごい。たまたま眠くなっていたタイミングで音楽をかけただけなのか、今まで本当に静かすぎるのが原因で眠れなかったのか、どっちなんだかわからないので今日もまた布団に入ったら音楽をかけてみようと思う。そして、今日の楽しかったことを言い合うこと自体もお母さんにとっては楽しいことなんだと伝えようと思う。